症状別にみる肛門疾患

肛門に起こる症状と
疑われる病気について

肛門へ現れる症状として、出血、痛み、かゆみなどが一般的ですが、原因となる病気は様々あります。以下で症状に応じて疑いのある病気について説明していきます。

出血

ペーパーに血が
付着している

タイミング

排便後、肛門をトイレットペーパーで拭くとき

出血量

トイレットペーパーに少し血が付着する程度です。場合によっては、便に少量の血が混ざっていることもあります。

可能性のある病気

いぼ痔(内痔核)や切れ痔(裂肛)が原因となっていることが多いと言われています。その他に潰瘍性大腸炎など、直腸に炎症が起こる病気が原因となることもあります。

肛門からの出血

タイミング

排便前、排便後

出血量

少し垂れてくる程度のこともあればシャワーのように勢いよく出てくることもあり、個人差があります。便器の中が血で赤く染まるくらい大量に出血することもあります。

状態

便の状態には問題はなく、痛みの有無は個人差があります。

可能性のある病気

いぼ痔(内痔核)や切れ痔(裂肛)が原因となることが多いです。出血が数日間経っても収まらない場合は貧血を起こす恐れもありますので、速やかに医師に相談することをお勧めします。

便に血液が付着している

タイミング

数日〜数か月間にわたって、便に血液が混ざった状態が続きます。

状態

便は通常の状態で、痛みも生じないことが多いと言われています。

可能性のある病気

大腸がん、大腸ポリープ、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、痔核、裂肛などが原因として考えられます。大腸がんやがん化するリスクが高い大腸ポリープが原因となっている可能性もありますので、なるべく早めに大腸カメラ検査を受けましょう。

下着に血液が付着する

タイミング

歩いている時

出血量

出血量には個人差があります。また、出血はほぼ見られない代わりに膿が付着することもあります。

可能性のある病気

直腸脱や内痔核の脱肛が原因となって、脱出した直腸や肛門の粘膜が下着に擦れることで出血が起こります。血栓性外痔核が原因となる場合は、血栓の一部が損傷することで出血します。痔ろうが原因となる場合では、出血こそほとんどありませんが膿の分泌が多くなります。

トイレで血液だけ出る

タイミング

便意を感じてトイレに行く時

状態

排便しようとしても便が出ずに出血します。便と一緒にドロドロした粘り気の強い血液が出てくることもあります。

可能性のある病気

内痔核、大腸がん、大腸ポリープ、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、放射線性腸炎、大腸憩室出血などが原因として挙げられます。大腸からの出血は大腸がんの疑いが強まるため、なるべく早めに内視鏡検査を受けることをお勧めします。

痛み

排便時の痛み

タイミング

排便の際に痛みを感じますがすぐに収まります。治療せずに放置してしまうと痛みが収まりづらくなります。

可能性のある病気

裂肛(切れ痔)が主な原因です。慢性的な裂肛であっても痛みは比較的すぐに収まりますが、肛門括約筋が損傷してしまうと痛みが収まりづらく長引くようになります。

常時、痛みがある

タイミング

排便時でなくても痛みを常に感じるようになります。突如として痛む場合もあれば時間が経つにつれて痛みが強まることもあります。

状態

痛みの強さに波があり、眠れないくらい強烈な痛みが続くこともあります。

可能性のある病気

肛門周囲膿瘍、血栓性外痔核が原因となることが多く、他にも肛門部アテローム(粉瘤)や膿皮症によって痛みを感じることもあります。

ヒリヒリする痛み

タイミング

ヒリヒリするような痛みが数日間続き、肛門が下着に擦れると痛みが強くなります。

状態

肛門が湿った状態で、場合によってはジュクジュクとした状態になることもあります。

可能性のある病気

単純ヘルペス、帯状疱疹(水疱瘡のウイルス感染症)、肛門部皮膚炎(湿疹)などが主な原因となり得ます。患部の組織を採取する検査や血液検査によって原因疾患を究明し、早期に治療を受けることが望ましいでしょう。

腫れやふくらみ

肛門のでっぱり、ふくらみ

タイミングと期間

排便の際に肛門にふくらみやでっぱりを感じるようになります。症状は毎日現れることもあればしばらく現れないこともあり、個人差があります。治療せずに放置すると、排便時以外でも少し力んだだけで同様の症状が現れるようになります。

でっぱりの状態

最初の内は指で押し込むと元に戻りますが、次第に戻りにくくなっていきます。

可能性のある病気

肛門ポリープ、直腸脱、内痔核(脱肛)が主な原因となりますが、大腸ポリープが外に出ていることもありますので、速やかに内視鏡検査を受けることをお勧めします。

急激な肛門の腫れ

タイミング

重いものを持った時、お酒を飲んだ後、朝起きた時、排便時に強くいきんだ時、下痢をしている時に起こりやすく、症状は突如として現れます。

腫れの状態

突如として近門が腫れ上がり、しこりのようになることもあります。また、痛みを伴うことが多いと言われています。

可能性のある病気

血栓性外痔核が主な原因ですが、肛門周囲膿瘍の初期症状として現れることもあります。血栓性外痔核が原因となる場合、1週間程度で激しい痛みは収まり、腫れも1カ月程度で収まることが多いです。

数日の違和感があり、
徐々に痛みや腫れが
強くなる

タイミング

最初の内は肛門の違和感を感じたり少し痛む程度です。その他、独特のニオイ、かゆみ、膿で下着が汚れるといった症状が現れます。また、時間が経つにつれて腫れや痛みが強くなっていきます。

状態

腫れた部分とそうでない部分の境界が曖昧で、でっぱりを肛門の中に戻すことは難しくなります。

可能性のある病気

肛門周囲膿瘍が主な原因となります。

肛門にブヨブヨや
ビラビラがある

タイミング

知らない間にできていた

状態

肛門の皮膚がたるんで皴ができて、ブヨブヨ・ビラビラした状態となります。元の状態に押し戻すことは難しく、痛みやかゆみを伴うこともあります。

可能性のある病気

スキンタグ(皮垂)という皮膚のたるみが主な原因となります。排便時に強くいきむ習慣がある方、痔が悪化してしまった方に起こりやすいと言われています。また、出産の際に肛門がうっ滞することが原因でスキンタグを起こすこともあります。

肛門周辺の
ザラザラやイボイボ

タイミング

知らない間にできていた

状態

小さなイボ状のできものが肛門周辺の皮膚に複数できることがあります。また、鶏のトサカやカリフラワーのような形をしたできものとなることもあります。

可能性のある病気

性感染症の一種である尖圭コンジローマが主な原因となります。発症が疑われる場合は、パートナーの方も含めて検査と治療を受けることが必要です。

かゆみ

痔によるかゆみ

タイミング

四六時中かゆみを感じるようになります。また、就寝時や入浴によって体温が上がるとかゆみが増すこともあります。

状態

湿気があり場合によってはジュクジュクした状態となることもあります。

可能性のある病気
  • いぼ痔:いぼから分泌される血液や粘液によってかゆみを感じることがあります。
  • 切れ痔:患部から出てくる体液によって肛門がかぶれることで、かゆみを感じることがあります。
  • 痔ろう:患部から膿が出ることで下着が汚れて、かゆみを感じる原因となります。

その他、体質の問題で肛門の皮膚が弱い方は、汗をかくとかぶれてしまってかゆみの原因となることがあります。また、女性はカンジダ感染がかゆみの原因となることもあります。したがって、かゆみの症状が続く場合は、一度医師に相談することをお勧めします。

明け方のかゆみ

タイミング

朝起きる数時間前から肛門にかゆみを感じるようになります。

状態

肛門の出口付近にかゆみを感じるようになります。

可能性のある病気

蟯虫(ギョウチュウ)の寄生が主な原因として挙げられます。一時期患者様は減っていましたが、近年少しずつ増加している傾向にあるため、朝方のかゆみが続くようでしたら一度虫卵検査を受けることをお勧めします。

便が出にくい

便を出しにくい

タイミング

排便をする時

状態

便が何かに邪魔されるような感覚があり、うまく排便できなくなります。なお、肛門の周辺を指で抑えれば排便できることもあります。

可能性のある病気

直腸脱や内痔核が主な原因として考えられます。その他、高齢の方や出産を経験されている女性の方は、骨盤の筋肉や靭帯の機能が低下することが原因で、同様の症状が起こることがあります。特に、女性の場合は子宮脱や膀胱脱を併発する恐れもありますので、なるべく早めに医師に相談することをお勧めします。

排便時に、膣の方に
ふくらんでくる

タイミング

排便をする時

状態

膣が位置する方向にふくらんで、肛門周辺を抑えないと排便が難しくなります。

可能性のある病気

直腸瘤が主な原因と考えられます。女性は直腸と膣の間の筋肉が薄いため、その筋力が低下すると直腸が膣の方向にふくらんで排便に支障をきたすようになります。

いきんでも便が出ない

タイミング

排便をする時

状態

排便時に強くいきんでもうまく便が出てこない、もしくは、全く出てこないといった状態となります。

考えられる病気

過度の便秘、内痔核、肛門狭窄、直腸脱、大腸がん、直腸瘤などが主な原因として挙げられます。また、他にも肛門括約筋の弛緩に支障をきたすアニスムスが原因で排便障害が起こることもあります。

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