胃が痛んだまま、眠れないということがあると思います。それでも横になっているうちに治まってくればいいのですが、眠れなかったというだけで、たとえ痛みが治まっても疲労が残って、翌日の活動に差し支えがでます。
単純に食べ過ぎ、飲みすぎ、冷えといった数日で自然に治ってしまうものもありますが、一刻も早い治療が必要な重篤な病気が原因となっていることも考えられます。
胃が痛くて眠れない場合の対処法
胃が痛くて眠れないという症状がでていても、受診のタイミングに迷ってしまうこともあると思います。少し様子をみて翌朝の受診でもいいもの、すぐに救急対応で受診したほうがいいもの、様子を見ながら生活習慣の改善などで治まるものなどのケースが考えられます。ここでは、迷った際の判断の参考になるように、胃の痛みに伴う症状などから、受診のタイミングについて考えていきます。
医療機関の早期受診が重要です
眠れないほどの胃の痛みに以下のような症状が伴う場合は、早急に受診を検討してください。夜間のことですから場合によっては救急車を呼ぶことも念頭にしてください。
- 吐血や下血がある(黒色便、タール便など)
- 発熱
- 吐き気や嘔吐を繰り返す
- 突然、これまで経験したことのないような痛みがおそってきた
- 腹部が張って排便したいのに便がでない、おならもでない など
救急対応ではなく一般外来や夜間外来で受診する際は、消化器内科や胃腸科を選ぶと良いでしょう。
医療機関では、問診で精しい経緯などをお訊きし、触診で胃やお腹の状態を調べ、考えられる原因疾患に対応した検査を行います。主に血液検査、腹部X線検査、腹部超音波検査(エコー)などの他、胃カメラ検査を行うこともあります。適切な検査で原因を特定できたら、それに応じて、必要な治療を行うことで、激しい胃痛を解消していきます。
早期受診することで発見できる病気
できるだけ早いうちに医療機関を受診することで、痛くて眠ることができないほどの胃痛の原因として、次のような病気が発見され、適切な治療で治癒できるようになります。
- 逆流性食道炎・非びらん性胃食道逆流症
- 食道がん
- 急性や慢性の胃炎
- 胃・十二指腸潰瘍
- ピロリ菌感染
- 胃アニサキス症
- 感染性腸炎
- 虫垂炎
- 早期胃がん
- 膵臓がん
これらの病気の中には、早期に発見することで、治療が簡単で済むものや、完治が望めるもの、発症する以前の健康的な日常を取り戻せるものが多く含まれています。いつもの胃痛だからと我慢せず、お早めに受診してください。
暴飲暴食を控える
食べ過ぎることで、胃で食べ物を溶かしきるために時間がかかり、胃液が分泌されすぎたり、胃がもたれたりする原因となります。
胃の粘膜は特殊な構造をしていて、胃酸や消化酵素の攻撃に対して、粘液を出して自らが消化されてしまわないように守っていますが、胃酸が過多になったり、胃が疲れて粘液を出す機能が低下したりすることで、胃液の攻撃と粘液の防御のバランスが崩れ、胃粘膜がダメージを受けてしまいやすくなります。
そのため、胃や十二指腸で炎症が起こったり、粘膜にびらんや潰瘍ができたりして胃痛をおこすことになります。
カフェイン摂取を控える
カフェインは胃酸の分泌を促進する作用があります。カフェインは玉露、コーヒー、紅茶などの他、ドリンク剤などにも含まれているものがあります。胃が痛むときには、これらの飲み物はできるだけ控えるようにしましょう。
辛いもの(からいもの)を控える
唐辛子などには、良い作用もありますが、辛味の強い香辛料は胃の粘膜を刺激する作用もあります。また、香辛料には胃酸を分泌させる働きもありますので、胃が痛む際には、辛いものは避けるほうがよいでしょう。
飲み物は常温に
冷たい飲み物を飲みすぎると、胃の温度が下がってしまいます。すると、周囲の血管が収縮し、胃の活動が低下します。冷たいものを一度にたくさん飲むことで、胃液も薄まり、相乗して胃の活動が低下してしまいます。
胃が痛むときは、冷たい飲み物は避けて、室温にもどした飲料を少しずつ飲むようにしましょう。飲むものは、カフェインや糖分などの多いものは避けて、水または薄い日本茶などを飲むようにしましょう。玉露はカフェインが多めですが、ほうじ茶などはカフェインが少なめになっています。
市販薬の服用
胃が痛んで眠れないほどであれば、朝までのしのぎとして市販の胃腸薬を飲むのもよいでしょう。
胃の痛いときに飲む市販薬としては、総合胃腸薬や胃粘膜保護薬があります。
総合胃腸薬は、胃腸の様々な不調に対応できるよう、複合的に成分を配合していますので、胃痛のほかにも症状があるときや、症状がはっきりせずに胃痛があるときに飲むと良いでしょう。
一方胃粘膜保護薬は、傷ついた胃の粘膜をカバーして保護・修復する成分を配合していますので、胃痛、胃もたれなどに限られる場合に有効です。
市販の胃薬を服用して、ひとまず眠れるようであれば、その後放置せず、できるだけ早めに消化器内科などを受診して、どこか悪いとことがないかしっかりと調べてもらってください。
胃の痛みの原因として考えられること
胃が痛む原因となるのは、主に「食生活」「ストレス」「ピロリ菌感染」の3つが挙げられます。
食生活
食生活が乱れることによって、消化器には大きな負担がかかります。特に胃液と胃粘膜の攻撃と防御のバランスが崩れやすくなってしまいますので、以下の行動を避けて、胃を大切にしましょう。
暴飲暴食
必要以上に食べたり飲んだりすることによって、食物を胃で溶かすための時間が通常より多くかかるようになります。そうなると胃酸の分泌が増えて、胃粘膜が痛むと同時に、胃の筋肉なども疲れてしまいます。
常に腹八分目を心がけて、3食を規則正しく摂るようにしましょう。また、つい食べ過ぎてしまったら、その後数日は消化によい食事にするなどで胃を休めてください。
アルコールの過剰摂取
お酒は適量であれば、血の巡りをよくするような効果もありますが、アルコールには刺激性もあるため、大量にのむことで、胃粘膜が刺激されダメージを受けてしまいます。それによって胃痛がおこりやすい状態になります。飲み方も一気飲みなどをせず、ゆっくりと飲むようにしましょう。
消化しづらい食べ物の摂取
脂っこい食べ物、肉のたんぱく質、生クリームなどを多く摂ると、消化に時間がかかり、胃に負担がかかります。胃酸分泌量も増えることで、胃痛がおこりやすくなります。
脂質も動物性たんぱく質も大切な栄養素ではありますが、あまり偏りすぎないように、バランスを考えて食べましょう。
ストレス
胃などの消化管は、自律神経によってコントロールされています。自律神経が乱れることによって、胃腸のコントロールも乱れて、痛みなどの不具合を生じることになります。
自律神経の乱れ
自律神経は、活動を活発にする交感神経と、活動を穏やかにする副交感神経があり、この2つの神経がバランスをとりながら胃などをコントロールしています。ストレスや疲労などで自律神経が乱れることによって、胃液分泌と胃粘膜の保護機能のバランスも崩れ、胃にダメージがおよぶことになります。
適切に休みをとる、規則正しく睡眠をとる、自分なりのストレス解消法を見つけておくなどで、疲れやストレスをうまく解消するように工夫してください。
ピロリ菌
ピロリ菌(ヘリコバクタ-・ピロリ)は、胃の中に入ると、ウレアーゼという酵素を分泌して、胃の内部にある尿素からアンモニアをつくり、胃酸を中和するバリアをつくって胃粘膜に棲みつきます。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの原因となりますので注意が必要です。
ピロリ菌の感染の有無は、胃カメラ検査やその他の検査で確認することができます。胃の不調が続く方は、受診とともに一度はピロリ菌感染検査を受けておくようにしましょう。
胃の痛みを感じる場合は当院までご相談ください
胃の痛みの多くは、お腹の上部中央の肋骨に囲まれたあたりにある心窩部という部分を中心に痛みを覚えます。この部分には、胃、食道といった上部消化管の他に心臓や肺、重要な血管なども多く、消化管の病気だけでも放置すると危険なものも考えられます。
我慢できず、眠れないほどの胃痛がある場合は、できるだけすみやかに消化器内科にかかるようにしましょう。
当院では、消化器病の専門医として豊富な臨床経験を積んできただけではなく、熟練した内視鏡専門医が検査を担当します。
当院では最新鋭の内視鏡システムを導入し、鎮静剤をつかってほとんど眠っているような状態のまま検査ができます。また、胃カメラ検査で異常が見つかった場合、該当箇所の組織を取り出し、病理検査が可能です。この検査により、ピロリ菌の存在も確認できます。
胃カメラ検査なら当院までご相談ください。